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「小さき者へ」 重松清

重松清さんの本を読むのはこれが初めて、読むきっかけとなったのは産経新聞で見つけた親子関係の、ぱっと読むと私小説のように感じる読みきりの小説だった。

この時感じた通り、この人の作品は親と子の関係、確執などがテーマになっており、
主に父親と子供の関係を掘り下げているものが多い。

「小さき者へ」はそういう親子関係をテーマにした短編を集めたもので、タイトルになっている小説は、登校拒否を始めて家に閉じこもり、家庭内暴力をふるう14歳の息子を持つ父親が、自分の14歳の頃を振り返りながらせっせと手紙を書いていて、その手紙が小説になっている。
手紙を書くきっかけになったのは、理解できないと思っていた息子がBeatles "Abby Road"を買ってきたことを妻から聞いて、Beatlesをかすがいに息子とわかりあえるのではとひらめいたことだ。自分も14歳のころBeatlesを聞きまくった経験があったからだ。
ただ、この手紙は渡す前の話なので、これから明るい結果に行き着くわけではない。
でも非常におもしろいお話にまとまっている。

私が一番好きなお話は「団旗はためくもとに」という元大学の応援団団長を父にもつ高校生(女の子)のお話だ。団長にとって一人娘はかわいくてかわいくてたまらない存在。
元団長ということで、少し外見もやくざっぽい父親のことを、困ると思いながらもとっても愛している娘。著者が男性なので女の子の父親を思う気持ちまでわからなかったようで、本当は父娘とはもう少し複雑かなと思いながら読んだけれど、高校を辞めて自分の道を進もうともがく娘を突き放しながらも、最後は応援する父親、父親の後輩がお金で困っているのを知った娘が、何か自分にもできることがあるのではと、大人びた言葉をはいたり、この辺りはとても現実的で、うちのだんなとうちの娘の関係にそっくりだったりする。

どのお話も、親がいて、子がいて、どうしても通り抜けなければならない関所みたいな日常を書いていて我が身にしみる内容だ。でもこの作品にめぐりあえて良かったと思う。
by Junpei642 | 2007-04-10 22:20 | Book Review


香港...出会いと別れが頻繁におとずれるtransitoryな街で、日本語を教えながら暮らしています。現在Kissing Fishというインディーバンドでベースを弾いております。ベースだけじゃなくてギター弾いて歌ったり、ドラムもたまにたたいたり、音楽とミュージシャンにかこまれ心豊かな日々を生きるパワフルおばちゃん!


by Junpei64

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